第九章

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第九章

「「ただいま」」 「…おかえりなさい」 千愛の英語教室へお迎えに行ったのは仕事帰りの夫で、いつも通り一緒に帰ってきた。 話は千愛の寝たあとね… 「千愛のリクエストだった冷麵にしたわよ」 「ヤッターかばん置いてくる」 ダッダッダッ…… 千愛が階段を駆け上る音と一緒に聞こえたのは夫の声で 「冷麵と何?」 エアコンのない洗面所でなく、涼しいここでシャツを脱ぎながらの通常運転のようだ。 「冷麵だけ。デザートは桃があるけど?」 「冷麵だけ?」 夫が、一食分の麺だけでは夕食に足りないことは重々知っている。 でもね…そんなに不機嫌な顔をされたって 「作っただけでも褒めて欲しいくらいのことがあって、作れませんでした」 不機嫌さに怪訝な表情をプラスした夫を真っ直ぐに見た。 「冷麵だけで褒めろ?」 腹が立ってきたわ… ダッダッダッ……千愛の降りてくる足音を聞きながら 「佐野キミって人はお友達?」 と夜を待たずに言ってみた。 「……はっ?」
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