見ちゃいけないモノ

1/5
前へ
/15ページ
次へ

見ちゃいけないモノ

何にでも、見ちゃいけないものってあるよね。 例えば化粧してる最中の女の子。 アイメイクしてる時とか、めっちゃ鼻の下伸びるじゃん。 カワイイは作れるけど、作ってる途中は全然カワイくない。 鏡の中をチェックして、わたしは気合を入れた。 「おーし、おしおし! メイク完了。まつ毛もおめめもパッチリだ!!」 前髪を留めてるクリップを外せば、染めて間もない金髪がおりてくる。 下の階からお母さんの呼び声が聞こえた。 「シロちゃん、朝ごはんだって」 わたしが誰もいない部屋の中で呼び掛けると、足元の影がざわっと揺れる。 そして影の中から一匹の白い犬が飛び出した。 狼みたいなそれは、ブルブルっと体を震わせてから、。 『全く、アンタはいつまで顔こねくり回してんのヨ? 鼻の下こーんなに伸ばして、いくら塗ったくったってアタシの美貌には敵わないわヨ』 「いや、オネエのにそんなこと言われても」 ご冗談を、くらいの扱いで笑うとシロちゃんは背中の毛を立てて怒鳴った。 『キーッ! アタシは正真正銘のメスなのヨ!!』 「はいはい、超美女の犬神ね。朝ごはん、カリカリだけ? 缶詰混ぜる?」 めっちゃ不満そうな顔でこっちを見てるけど、ごはんの誘惑に負けたらしい。 わたしの後について来た。 『今日はカリカリがいいわ、かつお味のヤツ。それから何度も言ってるケド、アタシの名前は白露(しらつゆ)ヨ! シロちゃんなんて、犬みたいに呼ばないデ』 ふんと鼻を鳴らしながらもしっぽはフリフリ、カリカリのドッグフードがお皿に出てくるのを待ってるのを見ると、どうしても犬にしか見えない。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20人が本棚に入れています
本棚に追加