手に手をとって

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『この中ヨ』 降ろされたのは犬ジイの家の裏山の洞穴の前だった。 耳を澄ますと、わたしの耳でも玲香の声が聞こえる。 そして犬の低い唸り声も。 「玲香!」 中に飛び込んだら、玲香が黒檀をぎゅっと抱き抱えたまま呪言を唱えていた。 「シロちゃん……これは……?」 『黒檀(コイツ)蠱毒に取り憑かれたのネ。小娘はずっとコレを押さえ込んで動けなかったンだワ』 もしも犬神が人間を傷付けたら、間違いなく排除対象になってしまう。 玲香はここで黒檀を捕まえて暴れないように押さえていたから、電話にも出らなかったんだ。 わたし達がここに来ても、顔も上げずにずっと呪言を唱え続けている玲香の制服のシャツは汗でびっしょりと濡れていて、声にも力がない。 限界が近いのはひと目でわかる。 「どうしたら黒タンから蠱毒を引き剥がせる?」 『……供物……かしラ。飢えて死んだ犬だから、多分食べ物を与えたら一時的に大人しくなるワ。でも外に出したら次は人間を襲ウわヨ』 玲香を探しに家を飛び出す時、シロちゃんのオヤツを肩掛けの小さなショルダーバッグに詰めてきていた。 蠱毒とはいえ、元々が犬ならきっとこれで釣れる。 「上等、わたしとシロちゃんでなんとかしよう! 最悪、しばらく耐えれば犬神講の増援が来る。そこまで踏ん張れればこっちの勝ちだ!」 『クソ黒犬だけど、ケンカ相手がいなくなルのもシャクだから、やってやるワ』
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