手に手をとって

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高ーい貸しを作る気満々のシロちゃんは、蠱毒にオヤツを取られても構わないらしい。 「ほぉら、ワンちゃん! ここまで。黒タンの中は苦しいでしょ。お外に出たらオヤツがあるよー」 シロちゃんお気に入りの犬用骨型ビスケットの袋を開ける。 人間の鼻にはそれほどいい匂いは感じられないけど、犬の嗅覚では何かを感じ取るらしい。 犬神達の鼻がピスピスと動いている。 「出てこないとわたしが食べちゃうぞ!」 わざと口を大きく開けて食べるフリをしてみた。 黒タンの体は玲香の呪言で動かない。 グルグル唸ってはいるけど、それ以上何も出来ないらしい。 焦れた蠱毒が黒タンの口から飛び出して来た。 「ウソ、めっちゃカワイイ!」 出てきたのはもふもふとしたポメラニアン。 蠱毒なんていう恐ろしいものには全然見えない。 けれど歯を剥いて睨む様子は、人への恨みに満ちている。 「かわいそうに……ほら、食べて良いよ」 わたしは餌の下に結界を張るための方陣を敷いてから離れる。 蠱毒は警戒しながらだけど、猛烈な勢いで餌を食べた。 飢えてるんだ。 食べ物も、愛情ももらえなくて…… 「シロちゃん、玲香と黒タンは?」 「飛鳥ちゃ……なんで……」 黒檀が大人しくなった事でようやく玲香はわたし達に気づいたらしい。
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