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「シロさん、おはよう。飛鳥、早くごはん食べちゃいなさい」
台所の隅でシロちゃんのごはんを出していたら、お母さんが代わってくれた。
『アンタ達家族ときたら、いつになったらアタシの名前覚えルのかしラ……』
ブツクサと呟く声を放っておいて食卓につくと、焼き立てのトーストが用意してある。
「コレ、齧りながら走ったりすると運命の人とかにぶつかったりしないかな」
ほんの冗談のつもりで言ったのに、返ってきたのは冷た〜い視線だけ。
「うーん……難しいんじゃないかなぁ。柊木家は犬神筋だから、怖がられちゃったりするし」
人の好いお父さんはそれでも何か返事をしようと、なんか身も蓋もないことを言い出した。
「シロちゃんはどうせ普通の人には見えないのにね」
わたしはパンにジャムを塗って、ぱくっと食いついた。
我が家、柊木家は少し特殊な家だ。
犬神筋と呼ばれる家で、数百年この白露という犬神を代々受け継いでいる。
その家の次の当主となる子どもが15歳になると、えーと……元服?
つまり大人になったってことで、白露を受け継ぐ事になる。
その為に小さいうちから修行をさせられていた。
現代じゃ全然大人じゃないと思うんだけど、昔の人は15歳で大人なんだって。
だから犬神を受け継いだら、仕事もする。
同じ犬神筋の家が集まって犬神講っていう組織を作っていて、そこから回されてくる怪異退治の仕事を受けなきゃいけない。
まあ、わたしにはまだ回って来てないけどね。
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