見ちゃいけないモノ

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ぼんやりと朝ごはんを食べながら考えていたら、お母さんに頭を叩かれた。 「時間! ボーッとしてるんじゃないよ」 「あ……行かなきゃ」 うちは古い日本家屋で、周りを竹の塀が囲んでいる。 門をくぐると、隣の家の土の塀を同じように出てきた人が見えた。 「おはよー、玲香」 「……おはよう」 肩までの黒髪と黒縁メガネの幼なじみは、わたしの髪を見て顔をしかめる。 真面目な優等生は、高校デビューの金髪もメイクも気に入らないらしい。 「(くろ)タンもおはよー」 『柊木の家は犬神だけでなく、跡継ぎも阿呆か。名前もロクに覚えられんとは』 玲香の影から黒い犬がぬっと現れると同時にディスって来る。 隣の(むくのき)家もうちと同じく犬神筋で、商売敵なせいかとても仲が悪い。 跡継ぎ娘のわたしと玲香が同い年なので、祖父ちゃん達はどっちが良い孫かバチバチしてる。 親たちは……椋家はライバル視してるみたいだけど、うちの親は正直それほど気にしてない。 モチロン、わたしは全然気にしてない。 「覚えてるよ、黒檀(こくたん)でしょ。でも黒タンの方がカワイイじゃん」 『軽薄な。くだらん』 『ちっちゃいオトコよネ、クソ黒犬ハ。呼び方ひとつでクドクドと』 白ちゃんと黒タンはいつものように睨み合って喧嘩腰だ。
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