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「あのさ……わたしもついて行っちゃダメかな? あの、ホラ、まだ仕事やったことないし、見学させてほしーなーみたいな」
えへへと適当にヘラヘラしながら言うと、玲香が冷たい視線でこっちを見る。
「犬神講の他の人も来るから平気。そんな遊び気分で来られたら迷惑」
軽く怒られてしまったけど、講の人が来るならきっと大丈夫だよね。
「ゴメン。でもさ、もしイヤな事とかあったら話してよ。夜中の電話でもいいからさ」
ちょっとした不安感から言っただけなんだけど、玲香はなぜかひどく傷付いたような泣き出しそうな顔でわたしを睨んだ。
「保護者みたいな顔しないでよ。飛鳥ちゃ……飛鳥はいつもそう!」
それだけ吐き捨てて、玲香は走り出した。
追いかければきっと追いつけるけど、足が進まない。
わたしはしゃがみ込んだ。
玲香のポケットからこぼれた、白いハンカチが落ちてる。
アイロンまでかかってピシッとしてて、その張り詰めた感じが玲香っぽい。
それを拾って、わたしはとぼとぼと学校へ向かった。
きっと今のあの泣き出しそうな顔は、見ちゃいけないものだ。
玲香にとって見られたくないものなんだろう。
だから走って逃げたんだ。
でも、今の会話のどこに玲香はそんなに傷付いたんだろう……アホのわたしにはいくら考えてもさっぱりわからなくて、ただモヤモヤした気持ちですり寄って来たシロちゃんの背中を撫でた。
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