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友達なんだ
その夜、わたしはモヤモヤを引きずりながら部屋でゴロゴロしていた。
中間テストの勉強なんか手につかないし、気晴らしのつもりで開いた漫画も頭に入らない。
「……やっぱこんなの、らしくない」
グズグズ悩むより、ちゃんと話そう。
部屋の窓を開けると、目の前の庭木に飛び移る。
勉強は苦手だけど、運動は得意なんだから心配はない。
するすると一番上まで登って、玲香の部屋を覗くけれど電気がついていない。
初仕事からまだ戻ってないのか、それともお風呂かも……けれど木の上から覗いた椋家はなんだか妙に慌ただしく、その様子に胸騒ぎがした。
「シロちゃん、出て来て!」
『何よォ、夜更かしは美容の大敵なのヨ』
まだ10時を少し過ぎたくらいだというのに、美意識高めの犬神はもうおねむらしい。
「明日シロちゃんの大好きなオヤツ買ってきてあげるから、椋さん家の声聞いて。なんか様子がおかしい。玲香に何かあったのかも……」
『いいじゃナイ、あんな小娘。今朝だっテ、飛鳥が親切に言ってやってるのにサ……』
「お願い!」
何も無いならそれでいい。
ただ、ひどくイヤな予感がする。
『わかったわヨ』
シロちゃんは気乗りしなさそうだけど、それでもひょいと窓から顔を出して耳を澄ました。
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