第4話

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第4話

「今日、茉里は休憩。何もするな」 部屋でソファーに私を座らせた桐斗さんは、時間を確認しながら言う。 「…休憩?」 「そう、休憩。異常なところへ行って疲れてるからな。ドバイとの時差は6時間?いや、5時間か…」 「日本が5時間早いの」 「だな」 スマホを充電した彼に 「恵茉の大学…調べたの?」 と聞いてみる。今日のことはいろいろとおさらいが必要だ。 「調べるってほどのことでもない。何か飲む?」 「桐斗さんは?」 「コーヒー淹れるけど、茉里は茉里の飲みたい物を言え」 「…レモネード」 「ホット?アイス?」 「アイス…炭酸で作って欲しい」 「ん」 「………ありがと」 美味しいレモネードシロップを炭酸で割るのは、ここへ来て彼が教えてくれてからのお気に入り。甘えちゃった…クッションを抱えて、コロンと横になった私に 「大学はな、学園が付属だから教員ならある程度簡単に生徒の情報は手に入る。大きくプライバシーに関わることは無理だが、出欠管理にはアクセス出来た。まあ…聞くことの出来る知り合いもいるしな…」 キッチンから答えをくれるようだ。 「必須教科を落としたら留年?」 「基本的に必須は卒業に必須ってことだから即留年ではないな。でも後期、この時期で必須と選択のいくつかヤバいって、まずいと思う」 「来年全部は無理ってこと?」 「前期と後期でプログラムされているから、後期の必須は来年度も後期ってのが通常。就活に不利になるかもな」 就活…? 彼はキッチンで二人の飲み物を作りながら、企業に提出する成績証明書には、取得した単位と年度、評価などが記載されていること。評価より取得単位数は重要で、明らかに単位数が少ないと卒業見込みを疑われ敬遠されることを教えてくれた。恵茉、ピンチだよ… 腹は立っているし、気持ち悪いとも思うけど…大学のことをざまぁ…とは思えなかった…パパたちだって、恵茉がちゃんと大学へ通っていると思っているのに…ちゃんと行こうよっ!!と…モヤモヤした。
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