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“茉里、今どこだ?”
「今…先生…灰原先生の家」
“ちゃんとご飯は食べてるか?”
「うん、毎日3食…おやつも…今はレモネード」
“そうか。そうか…そうか”
パパの声の向こう側から“出ないわ……”というママの声が聞こえた。二人同時に電話したのかな…
“先生から連絡をもらって…これは恵茉が友達…と言えるのか…を連れ込んで、茉里はアルバイトをしたってことか?”
「うん。男の子も女の子も泊まるようになって…ヤダって言っても恵茉とケンカになるだけで…生活費も独り占めされたし…」
“恵茉に一度確認したら、茉里と使ってると言っていたから……それも当然だな、と思っていたけれど悪かったね、茉里”
「うん……お金もだけど…お酒とか飲んでる男の子も怖くて…住み込みバイトを探して、先生に見つかったの」
“それは…茉里…パパたちに言えなかったんだな、恵茉のこと”
パパはゆっくりだったり早口になったり、いつもと少し違う話し方だった。
“このあと灰原先生と話をしたい。パパたちも出来るだけすぐに一時帰国する。でも先に、茉里が今困っていることを聞かせてくれるか?”
「あのね…パパ……」
“うん。なんでもいい。なんでも大丈夫。先生から送られてきたのを…見たから…茉里が見たことも知ってる。聞かせてくれて大丈夫。ママに代わろうか?”
「…ママは泣くからいいや…」
私も泣きそうだけど…桐斗さんがしっかりと抱きしめてくれている。
「冬服を取りに帰ったら…あんなだったから何もないの…部屋も無くなっちゃった」
“ああ…服だけじゃないね…本当に…とりあえずの必需品は買い物に行けるか?”
「行っていい?希海ちゃんと明日モールに行くつもりなんだけど」
“今すぐ茉里の口座に送金するから、必要な物は迷わず買い揃えて。いいね?服も靴もバッグも…マフラーやカイロも…何も我慢はいらないよ”
カイロはまだまだ要らないけれど…ありがとう、パパ…ほんのちょっと安心した。
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