第1話

6/7
前へ
/56ページ
次へ
先生からの突然の提案は、私の思考を止めるのに十分だった。 「どうする?」 そう言った先生は私を隣に座らせる。 ヤダ… 大きいソファーではないから腕の触れるくらい側に先生が座っているのに、放りだされた気分になる。学校をやめたくないからバイトした結果、ここで見捨てられたら最悪だ。 恵茉の行いを両親に伝えたところで、恵茉が両親を言いくるめ、言い含め、そのあとで私に告げ口の怒りを向けてくることは分かっている。 ただ怒鳴られるだけならまだいい。だけど今回は、連夜のあの人たちの素行から何をされるか分からない…という恐怖を感じている。 「学園は…?」 「黙っててやってもいい」 「…仕事があるんですか…ここで」 「俺が何か頼んで、茉里がそれをやれば立派な仕事」 すごく偉そうに言い切った先生は 「ヒ…ャッ…」 私の膝に頭を乗せ足をソファーからはみ出して横になると 「頭、撫でろ」 と目を閉じた。何?いきなりどうしたの? 「バイトの無料体験させてやるって言ってんの。撫でろ」 先生は私の手を掴んで、自分の頭に置く……無料体験…… 「………バイトなら…無料っていうのはおかしくないですか…体験でも…」 「じゃあ、即決採用してやる。撫でろ」 撫でろ……こんな感じでしょうか?髪のセットが崩れるのでは? 「あの……先生…撫で加減はこんな感じでいいですか…?」 撫で加減って何だ?と思いつつ…私は先生にオッケーをもらえるようにと様子を観察した。
/56ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2039人が本棚に入れています
本棚に追加