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先生からの突然の提案は、私の思考を止めるのに十分だった。
「どうする?」
そう言った先生は私を隣に座らせる。
ヤダ…
大きいソファーではないから腕の触れるくらい側に先生が座っているのに、放りだされた気分になる。学校をやめたくないからバイトした結果、ここで見捨てられたら最悪だ。
恵茉の行いを両親に伝えたところで、恵茉が両親を言いくるめ、言い含め、そのあとで私に告げ口の怒りを向けてくることは分かっている。
ただ怒鳴られるだけならまだいい。だけど今回は、連夜のあの人たちの素行から何をされるか分からない…という恐怖を感じている。
「学園は…?」
「黙っててやってもいい」
「…仕事があるんですか…ここで」
「俺が何か頼んで、茉里がそれをやれば立派な仕事」
すごく偉そうに言い切った先生は
「ヒ…ャッ…」
私の膝に頭を乗せ足をソファーからはみ出して横になると
「頭、撫でろ」
と目を閉じた。何?いきなりどうしたの?
「バイトの無料体験させてやるって言ってんの。撫でろ」
先生は私の手を掴んで、自分の頭に置く……無料体験……
「………バイトなら…無料っていうのはおかしくないですか…体験でも…」
「じゃあ、即決採用してやる。撫でろ」
撫でろ……こんな感じでしょうか?髪のセットが崩れるのでは?
「あの……先生…撫で加減はこんな感じでいいですか…?」
撫で加減って何だ?と思いつつ…私は先生にオッケーをもらえるようにと様子を観察した。
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