01 ざまぁ回避!悪役令嬢の覚醒

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 ———「あなたなんか、所詮私にはかなわないのよ!」  主人公令嬢に向けて放った言葉が頭に響く。令嬢の顔には涙が浮かび、その背後にいた婚約者のアルトが、冷たい目で見守っている場面が強烈に記憶に残る。  さらに、もう一つのシーンが脳裏をよぎる。  ———「これでアルト様は、私のものよ!」  彼女は麗しい貴公子アルト・デュラハンを主人公令嬢から奪い取った。しかし、それは強引なもので、真奈美(セレーナ)はその瞬間、自分の立場を理解した。セリーナは無理やり婚約を進め、いじめの末にアルトを手に入れた……が、そのアルトがとんでもない「クズ」であることには気づいていなかったのだ。   しかもセレーナは異常にプライドが高く、おだてに弱い。さらに世間知らずで思慮に浅く、計略等には無警戒な人物らしい。 「これはまずいわね……」  冷や汗が背筋を伝う。頭の中で、断片的な記憶がつながり、全貌が見えてきた。 (私が転生したのは、さんざんいじめた主人公令嬢の婚約者を奪った悪役令嬢、セレーナ。しかも、その婚約者が実はクズで、結婚後に破産、家が没落し、『ざまぁ』される……そんな未来!)  真奈美(セレーナ)の心臓が一瞬で跳ね上がる。これから待っている運命が、冷酷なシナリオとして脳裏に広がる。だが、それと同時に、何か不思議な感覚が彼女の中で芽生えた。まるで、自分の婚活カウンセラーとしてのスキルが『強化(チート)』されたかように、状況を即座に分析できるようになっていた。 (なんてこと……この世界では、私の婚活カウンセラーとしての洞察力が、異様に鋭くなっているみたい)
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