究極の選択

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「僕の本があるってことは、もう死んじゃったって事か」    だからその薄さなのか。  たった三十二年だもんな。 「すべての人に物語はあります。生まれてすぐの赤ちゃんにも、幼稚園に通っている子供にも、電車で隣り合わせた人もみんな自分の本を持っているのですよ」  先生は骨ばった指手コツコツ、と表紙を叩いた。 「特別サービスです。あなたが、知りたいことを、ひとつだけこの本で調べて答えてあげましょう。何でも、答えることができますよ。過去でも、未来でも。あなたに関することなら、すべて、ここに書いてあるのですから] 「未来も?」  そんなばかな。  それじゃあまるで、生まれた時から、どんな人生を送るのか決められているみたいじゃないか。 
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