究極の選択

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「ありがとうございます。先生」  ほっとしたら、膝がかくかくとたよりなく震えた。  へなへなとしゃがみこみながら、僕は先生の幾分すり切れた黒い革靴のつま先を見る。 「すごい偶然……」 「偶然じゃありません」  先生は一冊の本を差し出した。 「みんな私の授業などまともに聞いていなかった。それはいいんです。悪いのは私です。みんなが受けたいような授業ができなかったのですから。でも、あなたは私の話をちゃんと聞いてくれていましたね、三橋雄太(みはしゆうた)くん」  先生は微笑んだ。 「だからこれは、私からあなたへの特別サービスです」
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