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「時間は大丈夫なのか?」
老人は、少年に向かって言った。
「大丈夫だよ。お母さんはいないし、お父さんはパトロールに行って、夕方まで帰って来ないから。」
少年は、老人に言った。
「わかった。じゃ…今日は『眠れる森』という、不思議な森について話そうかな。」
老人は、少年を見ながら言った。
「これは、おじいちゃんのおじいちゃんから聞いた話だ。おじいちゃんのおじいちゃんは、更におじいちゃんのおじいちゃんに聞いた話。それくらい昔の話だ。」
老人は、静かに話しだした。
「人は絶望する。どうしよもなく悲しい思いをしたり、人生の先が見えなくなった時とかにね。」
老人の話は、少年には難しい。しかし、少年は目を輝かせながら、老人の次の言葉を待っている。
「ある日、村が暗くなり、いくつもの落雷が落ち、たくさんの人が亡くなった。人外と思える者たちも地に降り立ち、次々と村を破壊していった。」
老人の話は、あまりにも現実から離れた話。だからこそ、少年は、その話を物語として聞いている。
「その村には、誰からも愛される慈悲に満ちた青年がいた。その青年も村を愛し、その村を誇りにすら思っていた。どんな気分だろう?愛する人が目の前で死んでいき、愛する村が、原型を留めないほど破壊されるのは…」
話を聞いてる少年は、生唾を飲みながら、次の言葉を待っ。
「何も出来ずに見ているしか出来ない自分、そして、潰えてしまった未来。彼は、底しれないほどの絶望を見たんだよ。」
老人は、遠くを見ながら言った。
「青年にも、確実なる死が目の前に迫っている。その時だ。」
老人は、目を見開きながら言う。
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