1人が本棚に入れています
本棚に追加
「何かわからない、大きな影が、村を覆い、まるで、夜が来たかのように真っ暗になった。」
少年は、身を乗り出しながら、老人の顔を見る。
「村を覆った影…それは、大きな森が浮遊して、村の上空に止まっていたんだよ。救われようの絶望を感じた時に、その者の再生の為に現れるという『眠れる森』。それが現れたんだ。」
少年は、あまりにも現実離れした話に、興奮を隠しきれない。
「そう、その青年の救われようのない絶望に、『眠れる森』が呼応したんだ。青年は、村人の遺体の山を通り、誘われるように、『眠れる森』へ入っていった。」
老人は、疲れた表情を見せながら、少年を見た。
「その青年は、『眠れる森』に入ってどうなったの?」
少年は、疑問を老人に聞いた。
「さぁね…、誰にもわからないんだよ。」
老人は、笑いながら言った。
「次は、その青年が幸せになれるといいね。」
少年は、優しい目をして言った。
その時、自転車のベルの音が聞こえる。
振り返ると、自転車から降りて、少年に向かって、警察官が手を振っている。
「あっ!お父さん。もう、帰らなきゃ。また来るね。」
少年は、屈託のない笑顔で、父親の元へ走って行った。
「これも、運命だな。その時に向けて、自然とパーツが揃っていく…私は、空から事の顛末を見せてもらおう。」
そう言うと、老人は、釣竿を置き、空を見つめる。
背中から大きな翼が出て、宙に浮き、雲の彼方へと消えて行った。
最初のコメントを投稿しよう!