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戻ってきた私
……さん、
……ミ……ルさん
……ミチルさん
誰かが私の名前を呼ぶ。
それは以前いた世界での私の名前よ。今はアレクシナ・タルコット。
悪役令嬢なんだから。
「ミチルさん」
違うってば。
「ミチル」
違うって言ってるでしょ!
目を開けた私は涙を流しているカレンではなく、正美さん、お義母さんに抱きつかれた。
え?
「ミチル、よかった、気がついて」
見ると、こっちの世界の私の旦那が嬉しそうにこっちを見つめている。
「母さんが先に目を覚ましたんたけど、ミチルはなかなか目を覚まさないから」
旦那の横ではお義父さんもにこにことホッとした顔をしている。
「ほら母さん、もう大丈夫たからベッドに戻ろう」
見ると腕には点滴が刺さったままのお義母さん。
私、戻ってきたんだ。それにお義母さんも。よかった。
それから、以後。
いつもどおりの生活が戻ってきた。
ただひとつ、変わったことはというと。
お義母さんは、相変わらず厳しいとこは多々あるが それは、まあだらしないことが嫌いってことはよくわかったし。
意外に乙女で、涙もろい、違う面も私は知っている。
それに。
「ミチルさん、ほら、私、ニュートと一緒になったのよ」
「え?! 嘘でしょ」
我が家にやってきたお義母さんに目を丸くしている私。
「そのルートって難しいからなかなかいけないって」
ふふふ。と笑ったお義母さんは老眼鏡をかけゲーム機を手に笑っている。
「どうやって行くんです?」
「えー、教えたらつまらなくない?」
「いいでしょ、教えるぐらい」
「どうしようかしら」
前はゲームなんてと言っていたはずが「プリンセスダイアリー」のゲームを教えて欲しいと言って買ってきた。
今は一緒にゲームをやっている。
こういうのも悪くないかな。
楽しそうにゲームに夢中になる姿を見てつい苦笑してしまう。
ゲーム画面のカレンとアレクシナが笑ってこっちを見ているような気がした。
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