ヒロインの異変

1/1
前へ
/10ページ
次へ

ヒロインの異変

目で追っていたヒロインに誰かが近づいていく。 あれは、王子様、だよね、あの銀色の髪は。うわっ、ヒロインと王子って絵になるわあ。 「あ、クロード様」 「しっ!」 令嬢たちが小声でささやいている。 クロード王子は私の婚約者なわけで、そりゃそういうふうに言うよね。 私は気にならないし、2人の推しカップルを目の前に見れるなんて極上パラダイスなんだけど。 ご令嬢たちに気づかれないようにうほうほと2人の様子を見ていたが。 「え? 何で?」 いきなりヒロインのカレンが王子様に何やら文句を言っているような。クロード王子がまごついた顔してる。 何で? 何があったの? ご令嬢たちも「あらまあ」「カレン様、どうしたのかしら」目を丸くして囁いている。 当のカレンが、こちらに気づき、顔をそむけ走り去る。 私は、思わず走り出していた。 「ちょ、待って待って」 カレンはピタリと立ち止まる。 「あの、大丈夫ですか? 王子と何か」 くるりと振り返ったカレンはいきなり、頭を下げた。 「ごめんなさい! 私、婚約者のいる方に」 「はい?」 「こんなこと、駄目なことなのに。王子様にもきちんとお伝えしました。これは許されざることなんだと」 え、えー?! 「あ、あの、カレン様?」 眉もきりりと真面目な顔をこちらに向けたカレンは、 「私もきちんとしなかったからいけなかったと思います。本当にごめんなさい。あなたの思いを踏みにじるようなことをして。王子様もちよっとふらふらされただけだと思います。だから、どうか許してあげてください」 きゅっと手を握る。 「でも本当は許せないですけど」 小声で聞こえ、思わず顔を凝視した。 この子、あのカレンよね? ゲームのヒロイン、みんなから愛される、ちょっと抜けたとこも天然っぽくてかわいい、あのヒロインよね?
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加