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その名前は?!
「ああ、よかった、こちらにいらしたんてすね。探してたんですよ」
カレンは学園内の広場を見下ろす高台にいた。
そっと近寄って見ると、運動場のような広場に剣さばきの稽古をしている騎士が見える。
国の騎士団の人たちだ。そういえば、騎士団長とヒロインってルートもあったっけ。
え? もしかして。
そっと近寄ってみると、カレンは広場の奥をじっと見ていた。そこには騎士団長エドモンドと副団長、書記。数人が立って稽古の指導をしていた。
やっぱり騎士団長ルートなんじゃないの? 王子様には悪いけど、仕方ないよね。
「カレン様」
と声を掛けると目をまん丸にしたヒロインが頰を赤らめこちらに顔を向けた。
あらかわいい。
「カロリーナ様、騎士団長様かっこいいですよね」
「え? あ? 団長様というと」
「ほらあの方」
指さす私に、カレンは「ああ」とうなづいたが、小さな声で、
「あの、ボードを持った方は?」
「え? えーと、確かニュート様でしたかね」
「そうですの、ニュート様」
えー?! 嘘でしょう。確か、書記の人だよね。このルートは初耳なんですけど。もしかして隠しルート?!
じっとニュートを見つめていたカレンは、ほうっとため息をついた。あちゃあ、これマジなやつじゃん。ごめんよ、王子。
天を仰ぐ私の横でカレンは、
「和郎さん……」とつぶやいた。
へ? 今なんて言った?
かずろう?
……和郎?
穴が空くほどカレンを凝視してしまう。
まさか、まさか。
私の知ってる和郎は一人しかいない、
まさかまさかまさか
じっとニュートを見ているカレンが、いきなりはらはらと涙をこぼしはじめた。
え?!えー!
どうしよう、どうしたらいい?
「あの、あの、大丈夫ですか?」
「え、いえ、気にしないでください」
と言いつつも涙は雫となってこぼれ落ち、まるで宝石のようだ。
「あ、あの、これで」
と、ハンカチを差し出した。
「ありがとう」
カレンの涙はなかなか止まらなかったが、静かに涙をこぼす姿はやっぱりヒロインで。
そのヒロインから出た言葉が聞き間違いならいいんだけど。
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