青の深淵

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 マンションのエントランスを出てから、私は空を仰ぎ見た。  ―― 綺麗だった。  思えばウエッジウッドは淡いブルーだった。  身を翻すたびに優雅に広がる彼女のサーキュラースカートはネイビーブルー。  ―― 名前なんて一々覚えていられなかったけど、その数には圧倒された。 ――「インクってね、一つ手に入れたら次から次へと集まってくるのよ」  ―― ラメが入ってるインクもあったなぁ。 ――「ラメは万年筆を詰まらせちゃうからつけペン一択ね」  ―― 結局、100均のガラスペンと一緒に分けてもらっちゃったよ。     ペリカンのエーデルシュタイン ゴールデンラピス ――「世の中には、フラッシュして遊色もするラメ入りインクって言うのが有って……」    ―― えー、一度それ使って書いてみたいなぁ。     彼女が、銀座のインク専門店「アンコーラ」の紙袋に入れてくれたインクの小瓶と万年筆とガラスペン。 ――「来週、このお店に一緒に行かない?」  私は紙袋に視線を落とした。 「ふふっ。楽しみだなぁ……」  私は足取りも軽く帰路についた。
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