1人が本棚に入れています
本棚に追加
失恋するたび過去にタイムスリップしたくなる、けれど未来という時間が慰めてくれると信じて諦める(泣)
今日は拓也の家で、付き合って2年記念ということでピザパーティーをしている。
拓也とは私が27歳の時に、マッチングアプリで出会った。拓也とは同い年であり、当時、お互いがそれぞれ住んでいた家は車で30分ぐらい離れているところだった。私はマッチングアプリではじめて拓也に会ったとき、「あっ、私はたぶんこの人と付き合うんだろうな」と感じるほど、初対面の頃から波動が合っていたなと感じていた。
これまでマッチングアプリで出会った人は、やばい思想を持っている人、いい人だけどいまいち魅力を感じない人、ただのやり目、いろんな人に出会ってきた中で、そろそろ恋愛相手を探すのに疲れてきたなと感じはじめていた頃に、拓也と出会ったのは幸運だったのかもしれない。
今の所、順調に付き合ってきているという自負はある。これまで大きな喧嘩は一度もしたことはない。付き合い始めほどのラブラブ感は今はないけど、一緒に過ごしているときに安心感がどんどん増してきている。同棲していても、何ら不自由なく過ごせている。
最近は漠然とだが、もし結婚したらどのように暮らしていくか、将来について、会話することが多い。
今日は2年記念日ということで、何かあるのかもしれない薄々と期待していた。
アイスも食べ終え、ちょうど見ていた映画も見終わった。次はお風呂に入る流れかなとぼんやりと考えていた。
「優奈さ。ちょっといい。」
「ん?何?」
突然、拓也の声のトーンが変わる。もしかするともしや。
「ちょっと見てほしい動画があるんよ。」
「え?!何?何?」
さっきまで映画を見ていたテレビの画面に、周りは色鮮やかな花びらのグラデーションで「優奈へ」というメッセージが浮かんでいる。
「え?嘘?!何これ?」
「ちょっと一緒に見てほしいんよ。」
「うん。わかった。」
動画にはこれまでのデートで撮って来た写真が、私の好きな音楽と共にスライドショー形式で流れている。振り返るとこんなにたくさんの思い出が集まったんだなと感慨深い気持ちになった。
しばらく見ていると、写真ではなく、拓也が海辺のベンチに座っている姿に切り替わった。ここは初デートで行った海である。
動画に写っている拓也は笑顔でこちらを見つめていて、少し気恥ずかしそうだ。
「優菜へ、これまで一緒に過ごして来た中で伝えたいことがあります。どうか聞いてください。」
あっ。これはいわゆるプロポーズだろうと確信した。セリフを聞く前から込み上げてくるものがある。
「伝えたい事は、5つあります。」
ん?プロポーズで伝えたいことって、結婚してくださいって事の1つだけではないのか?きっとそれだけじゃない何かがあるのだと自己暗示する。きっとワクワクする事を言ってくれるんだ。
「1つ目は服を脱いだときは、裏返しのまま洗濯機の中に入れないようにしましょう。」
ん?????急にお母さんみたいな事を言ってくるやん。てかなぜ笑顔で注意してくるんだ。怖。
「2つ目は仕事が遅くなるときは、ちゃんと連絡しましょう。心配になります。」
いや、これもうお母さんだよ。
「3つ目は最近、金遣いが荒いです。計画的に使いましょう。」
あーそれは実感してる。ストレスを発散に金を使ってしまうんだよな。
「4つ目は、お菓子ばっかり食べてないで、健康的な食事を心がけましょう。」
なんか痛い所ばかりついてくるお母さんだよ。なんだろう言い返せないもどかしさと、彼氏の奇行ぶりに反応に困る。
「5つ目は、僕と結婚してほしいけど、今まで言って来たことを守ってほしいです。」
ここで動画が終わる。
いやー!今まで想像したことのない告白だなと一周回って笑えてきた。
というか、このタイミングで私への改善点を言ってくるのかと驚きしかない。
嬉しさ半分、彼氏の奇行への驚き半分で、私の心はパニックである。
「優奈さ。返事は?」
拓哉が優しい口調で話かけてくる。
私はいま人生の岐路に立っているんだと強く実感した。
最初のコメントを投稿しよう!