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提案
「ありがとう…ございます」
店の外に出てくると彼は思ったより若く見えて、情けなくなる。よもや他人から金を恵んでもらう事になろうとは。以前なら逆の立場だった(やったことはないが)
「随分困ってそうに見えたので。俺、家がこの辺だから、よく来るんですけど、お金が払えなくて困ってる人は初めて見たなぁ。あはは」
「・・・はは、はは」
昔の自分を見ているみたいだ
自信があって堂々としている
この辺に住んでるって本当なんだろうか?
地価はこの辺ならば高いに違いないのに
泣きたかったが無理矢理苦笑いを浮かべていると、手を差し出してきた。背も高いが、手も大きい。
「日向です。日向一真」
「………有瀬川学です。じゃ」
惨めだ
どこかに隠れたい位
「うわっ」
背を向けると服を引っ張られ、こけそうになった。
「待って待って。お金に困ってるのにどこか行く所はあるの?」
「それは、どっかで働いて、それで泊まる所探して」
「ふわっとしてるなぁ。良かったらうちに来ませんか?」
「え、いや、それは、流石に…悪いと思うので。初対面でそれは、、」
でも働くにも履歴書書いたり、面倒なんだよなぁ
アパート借りるのも保証人とかいるし
断りながらも足が留まっているのは、そういった理由とある種の心細さがあるからだ。目の前の青年はクリーンに見える。が、街は別の街みたいだし、ルールも、物価も、人種も変わりすぎている。まるで地球に降り立った宇宙人だ。
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