提案

1/1
前へ
/14ページ
次へ

提案

「ありがとう…ございます」 店の外に出てくると彼は思ったより若く見えて、情けなくなる。よもや他人から金を恵んでもらう事になろうとは。以前なら逆の立場だった(やったことはないが) 「随分困ってそうに見えたので。俺、家がこの辺だから、よく来るんですけど、お金が払えなくて困ってる人は初めて見たなぁ。あはは」 「・・・はは、はは」 昔の自分を見ているみたいだ 自信があって堂々としている この辺に住んでるって本当なんだろうか? 地価はこの辺ならば高いに違いないのに 泣きたかったが無理矢理苦笑いを浮かべていると、手を差し出してきた。背も高いが、手も大きい。 「日向です。日向一真(ひゅうがかずま)」 「………有瀬川学(ありせがわまなぶ)です。じゃ」 惨めだ どこかに隠れたい位 「うわっ」 背を向けると服を引っ張られ、こけそうになった。 「待って待って。お金に困ってるのにどこか行く所はあるの?」 「それは、どっかで働いて、それで泊まる所探して」 「ふわっとしてるなぁ。良かったらうちに来ませんか?」 「え、いや、それは、流石に…悪いと思うので。初対面でそれは、、」 でも働くにも履歴書書いたり、面倒なんだよなぁ アパート借りるのも保証人とかいるし 断りながらも足が留まっているのは、そういった理由とある種の心細さがあるからだ。目の前の青年はクリーンに見える。が、街は別の街みたいだし、ルールも、物価も、人種も変わりすぎている。まるで地球に降り立った宇宙人だ。 「俺、レトロ好きなんで、貴方に興味あるのが話しかけた理由なんです」 「そんな理由…ありですか」 戸惑いつつもいく場所もないため、提案にのることにした。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加