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俺がそれ
安直に付いてきてしまったとおもったが、悪い人間には見えないので考え得る最善の選択をしたと言えると思う。リビングのグレーのソファで待つ様に言われ待っていると、飲み物と菓子を手にやってきた。
「どうぞ」
「ありがとう」
「わからないからお茶にしたんだ」
「いただきます」
茶を飲み菓子をつまんでいると、一真がこちらに向き直った。
「何だよ?」
「いや、言いたくなかったらいいけど、さっきはどうしてお金が払えなかったの?」
直球に聞かれてしまった。隠そうかと思ったが、頬杖をついて瞳をあわせてくる様子につい口をついて出たのは、自分でも意外な言葉のほうだった。
「コールドスリープって知ってる一一知らないよな?」
「しってる。映画でみた、多分」
頷き、話を続ける。相手は元々薄ら笑い顔だが、別にバカにしているわけではなさそうだ。
「俺がそう。文系だから、その原理はわからない」
「えぇっ!!」
鳩が豆鉄砲をくらったみたいなベタな驚き顔で、すこし笑った。
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