銀行で

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銀行で

※ 永い眠りから目が覚めた。別に永い眠りと言ってもヴァンパイアになったわけじゃない。所謂『コールドスリープ』というものから目覚めたというだけだ。だが、問題は色々ある。 「有瀬川(ありせがわ)様の親類にあたる方々で資産を使い果たされてしまった様です」 「は?困ります。それじゃ、俺はこれからどう…」 銀行員が渋々と口を開く。いかにも迷惑そうだ。老人で混雑している窓口係は、誰も余裕がなさそうだ。あの皆が見つめている箱形の機械は何だろう。ゲーム機かなにかだろうか。 「幸い、病気は現代の治療で寛解されたとの事ですし、一から人生を楽しまれてはいかがでしょうか?その際にこの積み立てを」 商売の話か こんな時に いらつく 「結構です!」 追いかけてくる声はない。大方面倒な客が帰った事にほっと胸を撫で下ろしているのだろう。 「あ~!!」 銀行を出て叫ぶと、周囲が白い目を向けてきた。 こんなことなら死んでた方が楽だった 1999年に22才の若さで難病を発症した俺、有瀬川家の跡取りとしてコールドスリープの後、2024年の現代に健康な心身で再生した。しかし、まさか有瀬川家が財産を使い果たして離散してようとは、夢にも思わなかった。まさに悪夢だ。
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