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3
唇をくっつけたまま耀くんが僕を見た。至近距離で見つめ合う。
まつ毛の1本1本まで見えるこんな近さで耀くんを見られるのは僕だけ。
「……お風呂、沸かしとけばよかった……」
「ふふ、いいよ全然。一緒にシャワーしよっか、ね?」
もう一回、ちゅって音を立ててキスをした耀くんが、僕をふわっと抱き上げた。
「碧、なんか軽くなった気がする。ちゃんと食べてた?」
「え……あ、……うん」
「その返事、食べてないな?」
め、って叱られて首をすくめながら、でも耀くんがいるのが嬉しくてその首に腕を回してしがみついた。
「あ、とりあえず上着だけハンガーにかけとくか。どうせクリーニング出すけど」
お風呂場に向かいかけた耀くんが、耀くんの部屋の方に進路を変えた。
あっっ!!
しまった、シーツ……っっ
しかも耀くんの部屋のドアはきちんと閉まってなくて、明かりも点いてる。
「碧、俺の部屋で待ってた?」
「……うん……。だって……」
「淋しかった?」
うん、って頷いたら、ちゅってキスしてくれた。そして耀くんが僕を抱いたままドアを開ける。部屋の中を見て何て思われるか恥ずかしくて、僕は耀くんにぎゅうっと抱きついた。
「……碧はさぁ、もうほんとに、ほんっとに可愛いよね」
ふふふって笑いながら、耀くんがまた僕にキスをする。
「ね、『ただいま』ってさ、相手が自分を待っててくれてるって思うからこそ、はっきり言える言葉だよね」
ゆっくりと僕を下ろしながら、耀くんが柔らかい、でも力強い声で言った。
「……さっき耀くん、おっきい声で言ってた……」
足が床に着いても、僕は耀くんの首に手をかけたままぶら下がるように抱きついてる。
「うん。だって碧はこんなに俺のこと待っててくれてるからね」
耀くんが両腕でぎゅっと僕を抱きしめてくれて幸せ。
「うん、待ってた。ずーっと耀くんのこと考えて本も読めなくて、お腹も空かないくらい耀くんのこと待ってたよ?」
おっきな手が、背中を、頭を撫でてくれる。
「そっか……。じゃあ碧が軽くなっちゃったの、俺のせいだね」
耀くんが、ちゅっと頭にキスしてくれた。
「そうだよ。だからまた明日から一緒にご飯食べてね」
「もちろんだよ、碧。碧と食べるご飯が一番美味しからね」
「披露宴のディナーより?」
広い胸の中から大好きな恋人を見上げて訊く。
「そう、碧がいなきゃ立派な食事だって味気ないよ?」
当然って顔をして言った耀くんが、僕の額にちゅってキスしてくれた。
しあわせ
「……おかえり、僕の耀くん」
じっと見上げて言ったら、耀くんは眩しいほどの笑みを浮かべた。
「ただいま。俺の大事な碧」
ふふふって笑い合って抱きしめ合った。
「碧に『ただいま』って言えるの、めちゃくちゃ幸せな気分だよ」
耀くんが僕をぎゅうぎゅう抱きしめるから、僕も耀くんを抱きしめ返す。
「ね、碧。明日バイト入れてなかったよね?」
耳元で囁かれてドキッとした。
「うん、お休みにしてる……」
だって……
耀くんが、ちゅって耳たぶに口付けた。
「……じゃあ、朝まで……ね?」
掠れた呟きごと唇を重ねる。口角を舐められてぞくぞくした。
「…ね、ようくん……っ」
キスの角度を変える僅かな間に呼びかける。
「ん?」
僕をしっかり抱きしめてる耀くんの下唇をちゅって吸って、上目に見つめた。
「……寝て起きたら……、また抱いて……?」
「……やば……」
いつも爽やかな耀くんの目が、ギラリと欲の色に光る。
これはほんとに、僕だけの耀くん。
「大好きだよ、碧……」
「うん、うん僕も……、耀くんだいすき……っ」
無事に僕のところに帰ってきてくれてありがとう
『ただいま』と『おかえり』を積み重ねて
いつまでもいつまでもずっと
貴方と一緒に暮らしていきたい
了
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