2.正義の味方は24時間待機

1/1
前へ
/55ページ
次へ

2.正義の味方は24時間待機

====== この物語はあくまでもフィクションです ========= ============== 主な登場人物 ================ 南部(江角)総子・・・大文字伝子の従妹。南部興信所所長の妻。 大前英雄管理官・・・EITO大阪支部の管理官。コマンダー。夏目警視正と、警察学校同期。 足立祐子・・・EITO大阪支部メンバー。事務担当。 石動悦子・・・ EITO大阪支部メンバー。 宇野真知子・・・ EITO大阪支部メンバー。通信担当。 丘今日子・・・EITO大阪支部メンバー。看護担当。 河合真美・・・ EITO大阪支部メンバー。資材担当。 北美智子・・・ EITO大阪支部メンバー普段は、動物園勤務。 久留米ぎん ・・・ EITO大阪支部メンバー。 小峠稽古 ・・・ EITO大阪支部メンバー。 指原ヘレン ・・・ EITO大阪支部メンバー。 芦屋一美(ひとみ)警部・・・三つ子の芦屋三姉妹長女。大阪府警からの出向。阿倍野区夕陽丘署出身。花菱元刑事と同期。 芦屋二美(ふたみ)二曹・・・。三つ子の芦屋三姉妹の次女。陸自からの出向。 南部寅次郎・・・南部興信所所長。 幸田所員・・・南部興信所所員。総子のことを「お嬢」と呼ぶ。 花菱綾人・・・元大阪阿倍野署の刑事。南部興信所所員。 横山鞭撻警部補・・・大阪府警の刑事。 夏目淳之介警視正・・・警視庁副総監の直属。EITO本部に出向。 斉藤理事官・・・EITOをまとめる指揮官。 ========================================= = EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す = ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ この物語は、興信所調査員をしていた主人公が、テロ対策組織の長としても活躍するようになった物語です。 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 午前10時。EITO大阪支部。会議室。 「ほな、今日のミーティングや。」と、大前が言ったところに、総子が、息せき切って入って来る。 「総子、遅いぞ。」「すんません。興信所の方の打ち合わせしとって。」 「そういう時はなあ、総子。先に連絡入れるんや。運動会違うんやからな。15分、遅れます、って連絡して10分遅れるんや。そしたら遅刻や無くなる。OLと違ってタイムレコーダーはない。でも、入退室管理シシテムで記録される。歩合制やないし、遅刻欠勤減給もない。ヒーロー、いや、正義の味方は24時間待機や。お前らは茨の道を選らんだんや。みんな、分かったな。因みに、そこにある実績表はなあ、俺の採点の追加ポイントや。」 「コマンダー。ポイント貯まったら、何かと交換ですか?」と、尋ねたのは、ぎんだった。 「いや、ボーナスに追加する。俺にゴマするなよ。俺は気まぐれやからな。」 「自分で言うてるわ。」と、総子が言った。 「前置きはこれくらいにして、ひとみ。警察の経過報告。」 大前に指示され、ホワイトボードに立った、一美は、「半グレの会社は、起訴されました。あの後ガサ入れしたら、大量の麻薬が出てきました。それと、芋づるで、福祉団体も不正会計が暴かれました。吉本知事は、福祉団体を解散、告訴するそうです。それと、管理していた、福祉団体管理課を再編成するそうです。それと、福祉団体が違法なことをした場合の罰金の法令を議会にかけるそうです。夕方の記者会見で発表されます。」と報告をした。 「次。真美。」「はい。EITO本部から、明日武器が搬入されます。突っ張り棒では、不便だろうということで、バトルスティックが既に配れていますが、ニューバージョンのものが届きます。」と資材担当の真美が応えた。 「よし、順番がテレコになったけど、こっちの隊員は、陸自から出向の芦屋二美(ふたみ)や。そこの、芦屋一美(ひとみ)と姉妹や。ふたみは、大阪府警からの出向や。お前らより年上やけど、仲間や。よろしゅうにな。EITO本部は、伝子さん、天童さん、副島さん以外は、自衛隊や警察からの出向か出自や。民間人は少ない。でも、こっちは急ごしらえで民間人ばっかりや。無理言うて、芦屋姉妹を入れて貰った。犯人を逮捕する場合は、ひとみから大阪府警に連携で逮捕に来て貰う。」と、大前は説明をした。 「あのー。」「何や、お前のことは今から言おうとしてたんや。お前が一番可愛いからな。行動隊長の総子は、お前らが知ってる人間やから、紹介要らんようなもんやが、EITOエンジェルの姿で、他人の前で呼ぶ時は『隊長』って、呼びや。『あねさん』とか『大総長』はアカンで。」皆は笑った。 「ほな、挨拶しいや、隊長。」「んー。よろしゅうにな。」と言って、総子は頭を下げた。 ずっこけながら、「それだけかーい!」と大前は言った。 「よし、解散。武器のトレーニングは暫く辛抱してくれ。他人の前で見せたらあかんぞ。一旦、解散!」 午後1時。EITO大阪支部。作戦室。 「コマンダー、大変です。」「どうした、真知子。」「観覧車から人がこぼれて落ちたそうです。」「こぼれたあ?ドアは2重扉やろが。どこや。」「梅田の観覧車です。」「HEPファイブの、赤いやつか。」「はい。警察にも自衛隊にも連絡が行ってますが、EITOにも出動要請です。」「なんでや?」「人がこぼれたのは、てっぺんの席ですが、もう一人ぶら下がっています。そんで、変なオバハンがダイナマイト腹に巻いて、喚いているそうです。」 「よっしゃ、出動や。総子はどこや?」「今、通信送ったら、返事が来ました。スピーカーに出します。」真知子は、機敏に操作した。 「どないしたん?」総子の暢気な声がした。 「総子。テロリストらしい女が、梅田のHEPファイブの観覧車の下で喚いている。上の方には座席から放り出された人が宙ぶらりんや。今、どこや。」 「御堂筋線淀屋橋です。今、天王寺方面の電車に乗るとこでした。すぐ、梅田に向かいます。」 総子の通信が途絶えると、大前は、「真知子。EITO本部に連絡。一美にも二美にも連絡。」と、真知子に指示を出した。「はい、コマンダー。」 午後2時。HEPファイブ。赤い観覧車の入り口前。 警察官が、野次馬を整理している。 「どうですか?横山さん。」と、横山に一美警部は尋ねた。「あ、警部。これでは、警察も自衛隊も近寄れませんわ。どうしたもんかな?あの、ダイナマイト、時限装置がついてまっせ。」と、横山は報告した。 「じゃあ、取り押さえても時限装置を解除しないと。」一美が、ため息をついていると、EITOエンジェルスが3人現れた。何故か顔には、おかめの面を被っている。 「鬼はーそとー。鬼はーそとー。」3人は、そう言いながら、ジグザグに走りながら、女に近づく。ある程度走った後、総子はメダルを投げた。シューターを投げたのは、稽古とぎんだった。 女は後ろによろめいた。後ろから近づいたヘレンと美智子が女を羽交い締めにした。 「警部。今の内に!」と総子が叫んだ。 一美は、総子に言われるよりも早く、女に飛びつき、解体を始めた。 二美は、観覧車を縦に登り始めた。時間との勝負だった。 20分が経過した。二美が、もうすぐ登りきるかと思われた瞬間、ぶら下がっていた男の片手が外れ、ずり落ちようとした。二美が、咄嗟に手を伸ばし、男の手を支えた。 その時、オスプレイが飛来した。パラシュートを巧みに操り、金森が二美から男を預かり、ゆっくりと落下した。 なぎさが、パラシュートで降りて来て、二美を抱き、ゆっくりと落下した。 観覧車の下では、女を稽古達が4人がかりで押さえ、総子は、一美を手伝った。 時限装置の5分前。一美は解除に成功した。 上空に、中部方面隊信太山駐屯地から発進した自衛隊機が飛来した。 地上に降りた二美は呟いた。「遅いよ。」 午後4時。EITO大阪支部。会議室。 一美警部が帰ってきた。「後は横ヤンに任せて来ました。コマンダー、あの女は精神に異常を来しています。落下した男も、落下しそうだった男も、女の弟だそうです。野次馬の中に、女の近所の人がいた為、すぐに身元が割れました。ヤミ金で、追い込まれたようです。詳細は、助け出された弟が全て話してくれました。借金で首が回らなくなった時に、突然見知らぬ男に声をかけられ、借金の一部を肩代わりしてくれたので、信用したら、ヤミ金に紹介され、ヤミ金業者は、返せないなら死んで見せろ、いや、演技すればいいだけだ、とまた欺された、ということです。」 「すると、一美。心中は演出されたんやなくて、嵌められたんか。ヤクザより酷いな。」 「それだけじゃないんです。もう、そのヤミ金も、元々のサラ金ももういないんです。」 「初めから計画通りっちゅう訳か。あの女の家族は、誰かに深く恨まれているんか?」 真知子が、一美を呼んだ。「警部。横山さんから通信が入ってます。」真知子はスピーカーをオンにした。 「警部。一家心中させられた樋田一家の両親は、コロニーの時に亡くなったんですが、十年前世間を騒がせた詐欺集団の幹部でした。恐ろしい復讐劇ですな。生き残った男も退院後、地獄が待ってますな。ほな。」 通信は途絶えた。 「コマンダー。これも那珂国ナフィアの仕業かな?」と、総子が尋ねると、「いや、それやったら、本部に宣戦布告するやろ。でも、総子の言う通り、大きな組織がバックにありそうやな。さ、祝杯や!て言いたいけど、貧乏組織や。マクドさえおごれん。みんな煎餅で堪忍してくれ。コーヒーはお代わりあるぞ。」と、大前は言った。 皆、苦笑した。 午後5時半。南部興信所。総子が所長室で書類を書いていると、南部と幸田と花菱が帰って来た。 「お帰り。」「何や元気ないな、お嬢。コマンダーにセクハラ受けたか?」幸田がからかった。 「アホ!そんな事あったら、ウチのダーリンが黙ってへんわ。」 二人の会話に花菱が口を挟んだ。「大体のことは、横ヤンから聞いたで、総子さん。大変やったなあ。ご苦労さんです。」 「さっき、大前さんからも聞いた。バックに何らかの組織がありそうやて。総子は体一つではもたんな。二つに分けて活躍って訳にもいかんしなあ。」南部が言うと、「そう。パクッと二つに分けて・・・って、私は豚まんか!!」と総子は『乗り突っ込み』で返した。 所内に笑いがこだました。総子は、一日の終わりを感じた。 ―完―
/55ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加