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「直美……あんたまだ不毛な結婚生活続けるつもり?」
修司は長期出張。
直美は子供を連れて実家へ。
両親は近くのオフィス街で、喫茶店を経営しているが今日は定休日。
姉の明美は子供と遊びに来ていて、明美の子供と直美の子供は別室で母に遊んでもらっている。
直美は明美に結婚生活の悩みを、あれこれ相談している。だけど、結局離婚を勧められる。
「……」
明美は溜め息をはくとコーヒーを飲み干した。
「仕事が休みでも、修司さんは家族と過ごす事はない」
「修司さんに愛されてないのが辛い?修司さんに恋人がいるのが辛い?」
「はじめから愛されてないでしょうが」
「あんたわかっている?」
明美は痛い所をつく。
「修司さんと恋人の間に割り込んだのは……あ・ん・たでしょうが?」
「なーにが1回だけでいい。思い出にするから抱いてくれって」
「いくら好きな相手だからって、恋人でもない男に股開いて、自分を安売りして。アホか」
「それで手を出した、修司さんも修司さんだけど……」
「たった一夜の行為で子供が出来て、結婚迫ったのは直美……あんたでしょ!あげく結婚を迷う修司さんの実家に突撃して、あちらのご両親巻き込んで」
その時の両家の修羅場を思い出したのか、明美は直美を睨む。
「まあ……修司さんが他の女性との間に子供が出来て結婚するのに、身を引かないあちらの恋人も図太い神経しているけどね」
「あんた達3人ともおかしいよ」
明美はコーヒーのおかわりを自分だけでなく直美の分も注ぐと、自分のコーヒーに角砂糖を2つ放り込んだ。明美は普段ブラックでコーヒーを飲むが、イライラすると気持ちを落ち着かせるためコーヒーに砂糖を入れる。
どうやら昔からの癖のようだ。
「母親からは結婚する道具にされて……父親から距離置かれている春樹が1番可哀相!」
「悲劇のヒロインぶるのもいい加減にしな!」
「修司さん前に酒に酔って『避妊したはずなのに』『子供さえ出来なければ』ってぼやいていたよ」
「子供に生まれながらの十字架背負わすなんて……」
「あんた……まさか変な小細工して無いわよね?」
……修司に取っては運命が変わった悪夢のような一夜……あの夜の記憶には触れたくないのだろう。直美はだんまりだ。
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