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「坂下さん、可哀想だよね〜。男性社員の昇進の方が優先されちゃうから、坂下さんなかなか昇進できないんでしょ?それで足元見られてるから、本田課長が『昇進したいなら、こういう案件も頑張ってやらないと!』て坂下さんを使い倒してるんだよ。」
翌日のランチ。今日は食べる時間がある、嬉しい。同期入社のリリコと一緒にパスタランチを食べながら、そこで坂下さんの可哀想話を聞いた。
坂下さんは、本当に毎日頑張ってる。本人も電話でクソ客、あ、また間違えた、お客様からガン詰めされて大変なのに、後輩ちゃんの対応の相談を受けたり、泣いてる後輩ちゃんのフォローをしたり、もう全てにおいて神。
リリコはクリームパスタをフォークで巻きながら、ため息をついた。
「あたしもさぁ『お前のことネットにかいてやるから、覚悟しろよ』て言われて泣いた時、坂下さんに話聞いてもらったもん。」
「うわ、えっぐ。ネットに書くって言うヤツ、たまにいるよね〜。」
「それな〜。あと『私はゴミクズです』って言えってお客さんに命令された時とか〜。とにかく何かあったら全部坂下さんに相談してるわ、」
「あー、わかるぅ、私も。『これ全部録音してるんで、ネットに拡散しますね』とか言われた時とか相談した、」
「えー、やば!そんなの言われたの?あたしもさぁ〜、」
次第に私たちは坂下さんの話から「自分が今で受けてきた酷い仕打ちを自慢する会」にシフト。女性差別、脅し、罵声、セクハラなんて日々当たり前の私たちだから、この手の話は事欠かない。
こうやって愚痴ってスッキリしないとメンタル削れるだろうに、坂下さんはそれをしない。本当に凄い。真似できない。
お腹いっぱい食べて、午後の仕事頑張るぞ〜って思いながらフロアに戻ったら、後輩ちゃんがシクシク泣きながら坂下さんに相談していた。
「どうしたんですか?」
自分ではどうもできないくせに、首だけ突っ込む私。坂下さんは後輩ちゃんの背中を撫でながら、儚げに微笑んだ。
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