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口笛は 遥か山の向こうまで
風にのって ふもとの街へと
少年が一人 立ち止まる
彼は ハーモニカをたずさえ
口笛に合わせて 反対側を向いた
少女が一人 立ち止まる
彼女は 木靴の踵を鳴らして
口笛に合わせて 山を透かし見た
青年が一人 立ち止まる
彼は 騎士の剣を身につけて
口笛に合わせて 道を見据えた
乙女が一人 立ち止まる
彼女は 踊り子の衣装の裾をひるがえし
口笛に合わせて 足を踏み出した
新郎が一人 立ち止まる
彼は ボタンホールの薔薇を見て
口笛に合わせて 歩みを進めた
新婦が一人 立ち止まる
彼女は 幸せそうに息を吸い
口笛に合わせて 道を登り始めた
老爺が一人 立ち止まる
彼は 思慮深い瞳をのぞかせ
口笛に合わせて 空を仰いだ
老婆が一人 立ち止まる
彼女は 深い苦労をにじませて
口笛に合わせて 杖をついた
一人 一人と加わって
いつしか人が 集まった
子猫が一匹 立ち止まる
子猫は ふわりと尻尾を揺らし
口笛に合わせて 鈴を鳴らした
犬が一匹 立ち止まる
犬は 足音軽く駆け抜けて
口笛に合わせて ボールを追った
馬が一頭 立ち止まる
馬は 背負ったチーズに目をやって
口笛に合わせて いなないた
兎が一羽 立ち止まる
兎は 鼻先を小さく動かして
口笛に合わせて 飛び跳ねた
一匹 一頭 一羽と加わって
いつしかみんなが 集まった
街を上げて 山を登り
誰もが 顔を上向かせ
笑顔を見せて 助け合い
柔らかい言葉が 行き交って
いつしか 街の心はまとまった
のどかな景色が 広がった
未だに響く口笛は
誰とも知れぬ 牧場の
どこかの誰かのしあわせと
楽しい夢とが いっぱいに
宝箱には 詰まってる
キラキラとした 輝きは
心の中から あふれ出し
みんなを 集めて
幸せが 集まり
夢が 集まる
そんな 素敵な物語
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