ただいま、それはたった一つの言葉

素直になれなくて

ある日、大富豪の住み着く超大金持ち学校で

「おい、素直になれねえのかよ、ただいまも言えねえのかよ、だせえなあ。」

とバカバカしい男子に声をかけられた。勉強もできず、かと言って運動がものすごく得意であるわけでもなく、いうと大富豪の落ちこぼれのようなやつだ。そんな落ちこぼれのようなやつが大富豪のてっぺんに立つ私になんて言葉をなすりつけるのだろうか。

「そんなこと…、ダサくない、あなたのほうがダサいよ！」

そう、ダサくないのだ、しょうがないのだ、私がここで生きていくにはこういうことしかできないのだ。あのとき、泥をなすりつけられ、すすらされ、わかれた人生にもう二度と戻りたくないのだ。このような私の絶対的な良いお言葉に、そいつは全く持って耳を傾けず、また言い返した。

「まだわかんねえのか！ただいまはな、ただいま帰りましたの略語なんだよ！そう言わねえと、無事かどうか分かんねえだろ！！よくご無事に帰ってくださいました、なんて言ってくれてんだからちゃんと言えよな！」

その時、私の視界はぱっと広がった。
おかえりなさい、いつも言ってくれているその言葉、私に無事ですか？といっているのとおんなじだったのだ。そう、人間は、私達は、いつの間にかそう言っているけれど。実はとても相手を心配しているのだ。

…はは、私ってば馬鹿だ。ダサいのは私の方だった、君は＿とってもかっこいいね。ただいま、そんなこと言える君って素晴らしい。

今日から、言ってみようか。恥ずかしいし、心はカオスになっているけど。それでも、誰かが心配してくれているのならば。やってみる価値はある。

「おかえりなさいませ、お嬢様。」

「ただいま！今私は元気だよ！」