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そろそろ日付も変わろうという頃、天気予報通りに雨が降り出した。やがて雨音に混ざり始めた雷の音。
もう寝るだけだから、少しくらい天気が悪くてもどうということはない。朝になったら晴れてるといいな。
そう思い、布団に入ってしばらく。雷の轟音で目が覚めた。
今のはかなり近かった。まさか近くに落ちたりしてないだろうな。
そんなことはないだろうと思いながらも、様子を窺おうと窓辺に寄った瞬間、稲光が辺りを照らした。
その時見えた謎の影。
カーテンの向こう…隣の家の屋根の上に何かがいた。
鳥? 猫? こんな雷雨の日に?
確かめようと、カーテンに手をかけた瞬間、また稲光が辺りを照らした。
…違う。鳥や猫じゃない。一瞬見えただけだけれど、あれはこの世に存在する生き物のシルエットじゃなかった。
雷が轟き、辺りが明るくなるたび、隣の屋根の上で何かが踊る。その姿が次第にこちらに寄ってきていると気づいたのは、何度目の稲光の時だっただろうか。
近づいてくる踊る何か。
雨音に消されないほど近くなった動く音。笑っているように聞こえる鳴き声。
俺の部屋の窓の外にいる。そこで踊りながらこちらを窺っているのが気配で判る。
怖いもの見たさと、それが何であるのか、正体を確かめたい欲求。
決して従う訳にはいかないそれらを必死に心の奥に押し込んで、雨と雷が遠ざかり、奴らもまたいなくなることをただ待ち続ける…。
稲光りに踊る…完
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