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「どうする? 試してみて、やっぱりやめるってのでもいいよ」
「たたたた試すって、試すって何を、その、」
「夫婦になれるかどうか?」
至近距離の体温に鼓動が跳ねる。抵抗できない。綺麗な顔はずるい。
「一度は俺でいいか、試してほしい気持ちはある。他の男を選ぶんだとしてもね」
「そ、その心は」
「試したらわかることもあるだろう」
「たた確かに頭で考えるより、行動で気持ちがわかる場合もありますけどぉ」
密室。布団の上。二人きり。
「……楓は、どうしたい?」
さらにこの台詞。
なんというか、いくら私でも─流されてしまう!
そのとき。
「はいはい! 朝ばい! 夜はもう来とーとに二人とも何してんの!」
お鍋カンカンさせる音とともに羽犬さんがやってくる。
あっと思う前にがらっと障子を開けられた。
「ぎゃー!」
「ぎゃーじゃなかたい、もう! 早くご飯食べに来んね! 紫乃も邪魔せんの!」
鍋に生えた手が勝手にトントン自分を叩いているのだ。でんでん太鼓みたいに。
羽犬さんは去っていく。
私が茫然としていると、苦笑いした紫乃さんが立ち上がった。
「朝から話し込みすぎたな」
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