第四章・蓬莱を求めて

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「どうする? 試してみて、やっぱりやめるってのでもいいよ」 「たたたた試すって、試すって何を、その、」 「夫婦になれるかどうか?」  至近距離の体温に鼓動が跳ねる。抵抗できない。綺麗な顔はずるい。 「一度は俺でいいか、試してほしい気持ちはある。他の男を選ぶんだとしてもね」 「そ、その心は」 「試したらわかることもあるだろう」 「たた確かに頭で考えるより、行動で気持ちがわかる場合もありますけどぉ」  密室。布団の上。二人きり。 「……楓は、どうしたい?」  さらにこの台詞。  なんというか、いくら私でも─流されてしまう!  そのとき。 「はいはい! 朝ばい! 夜はもう来とーとに二人とも何してんの!」  お鍋カンカンさせる音とともに羽犬さんがやってくる。  あっと思う前にがらっと障子を開けられた。 「ぎゃー!」 「ぎゃーじゃなかたい、もう! 早くご飯食べに来んね! 紫乃も邪魔せんの!」  鍋に生えた手が勝手にトントン自分を叩いているのだ。でんでん太鼓みたいに。  羽犬さんは去っていく。  私が茫然としていると、苦笑いした紫乃さんが立ち上がった。 「朝から話し込みすぎたな」
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