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第一章・4tトラックと神様
目を覚ますと、すごい美形が私を覗き込んでいた。
私を見てほっと目元を緩ませる。
「生きていたか、楓」
長い睫に縁取られた瞳は、夕日のような黄金色。肌も染み一つなく透き通っている。
現実味がない。けれど吐息が顔にかかったから紛れもない現実だ。
そんな美貌のお兄さんは、サラサラの稲穂色の髪を耳にかきあげ、力強く私を抱き起こす。
見知らぬ和室の天井。なんか血生臭い。
「ここはどこ、私は誰、お兄さんはどなたですか……? って、ぎゃー!」
見回して私は悲鳴をあげた。和室一面に、大勢の人が血まみれで倒れていたからだ。
「あが、あがが、あが、」
「自分がやったんじゃないか、忘れたか?」
「わ、私殺人者なんですか!?」
「違う違う。えーっと……記憶、どこまである?」
「ナニモアリマセン」
「……そうか。じゃあ取り急ぎ、三つだけ説明する」
お兄さんは困ったふうに顔を顰めると、私の目の前に三本指を立てて見せた。
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