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「……うーん、そうですね……」
私は返事に困って、腕を組んで首をひねる。
正直なところ、紫乃さんは異性として好みなんだと思う。噓みたいに綺麗な顔立ちも素敵だし、顔に似合わない神様らしい大雑把な行動力も好きだし、何より弱っている姿を見ると、守ってあげたいと思う。
家族愛、親への愛、兄への愛、恋愛、その他。
この気持ちをシンプルに枠にはめようとするならば、確かに恋や愛の感情が、一番正解に近いのだろう。けれどそれはあくまで、強いて言うならというだけで、何より─今の私だけの判断だ。
そもそも「強いて言うなら」くらいのノリで、恋愛対象です! と言っていいものか。
「前の楓は何も言ってなかったんですよね、確か」
「ああ。十八歳になってから決めるって約束だったから」
「うーんどうしよう」
「だから今の楓の意思で答えてくれていいよ。それに合わせる」
「合わせるって言われても……」
私は腕組みをして唸った。
死んで輪廻で人生リセットしているならともかく、私は記憶を失う前の楓の延長線上に生きている。
もし前の楓に好きな人がいたら?
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