第四章・蓬莱を求めて

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 午前中、紫乃さんは用事があると言って屋敷を出ていた。  地下鉄の中洲川端駅に迷子になった人間を誘い込む違法悪徳猫又キャバクラがあるらしく、それの行政指導に同行するのだとか。  神様も大変だ。  そもそもあの駅は、酔ってなくても迷う。  紫乃さんが外出しているのをいいことに、私は羽犬さんのカフェに向かい、そこに遊びに来ていた人魚さんたち、鯉さん、その他いろんなお客さんに突撃取材を試みた。  春はフルーツの季節ということで、冷蔵庫がパンッパンにフルーツで溢れたお店は普通なら数千円かかりそうなてんこ盛りフルーツパフェをあちこちのテーブルに提供している。  カフェ全体が甘い匂いでいっぱいだった。  私は羽犬さんを手伝いながらお客様と雑談をしつつ、それとなく質問してみた。 「元の私、紫乃さんのことどう思ってたっぽいですか?」  そうすると回答はこうだ。  まずは人魚さん。 「元の自分なんて気にしなくていいんじゃない? もう今は今の楓ちゃんでしょ?」 「そうそう前から仲良かったよ。関係? さあ。兄妹みたいで可愛かったけど」
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