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ニューヨーク忘れてた
ヘイデンの野郎、元気してやがんのかな?ライルはそんなことを考えながら、また氷の一撃を華麗に躱していた。
「王様!我々も、凍り付きそうです!」
横を飛んでいた、男ピクシーが叫んだ。
「おう。だったら、安全なところで固まってろ」
散弾の如く飛び交う氷粒を、風のように躱している。
「な、何者だ?!お前は?!何故、こうまで躱せる?!」
攻めていた方が、疲弊しそうになっていた。
「はん?こんなのよ?スカアハの槍の連続突きの方が、はるかに強えぜ?ガキの頃から、こういう追いかけっこ、やってんだこっちは。で?お前、百億狙ってんのか?」
軽くのたまったライルに、霊刀銀竹の持ち手は、
「百億の霊刀、嵐導丸の話は聞いておる。私が欲するのは、百億と呼ばれる刀を手にしたという、意義にこそある!真の意味で、私が最強となるのだ!」
ああ、ああ。こいつもかよ。全く、小せえ野郎だな。
「最強になりてえ?だったら、いい方法があるぜ?そりゃあな?」
そう言って、ライルは、カリバーンを地面に打ち付けた。
「バスティ・バイパーだ」
それで、持ち手は、それに気付いた。
この、水たまりは、一体?
火花が散って、銀竹の持ち主と、銀竹の刀身に、火が燃え上がった。
「これは?!」
「ガソリンってよう、凍り付かねえんだとよ?おめえがどんだけ冷気振り撒いてもな?で、火が点きゃみんな、溶けんじゃねえの?いや、凍り付いた道路建物はともかく、その刀と、おめえ自身は?」
その場で、転げまわった持ち手の姿があった。
「すっかり焼けた、霊刀?要らねえよ。病院行って、捕まってろ」
こんがり焼けた持ち手を放置して、ライルはさっさと踵を返していた。
周辺は、恐ろしい勢いで、氷が解けていき、焼けた持ち手は、溺れかけていた。
「ってか、忘れられてねえか?俺」
まあ、忘れられてますな。王様。
男ピクシーは、簡単に勝利した王の生き意地の汚さに瞠目する共に、忘れられた王って、可哀想だなと、憐憫の情も少し抱いていた。
華やかに火花珠と散る剣宴、勝者の数は、もうほとんど残っていなかった。
剣宴のいただきに、ライルは手が付かんとしていた。
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