ニューヨーク動乱

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ニューヨーク動乱

 やれやれだぜ。ニューヨークに降り立ったライルは、街が猛吹雪に飲み込まれているのを確認していた。 「この期に及んで、伊吹嬢と君のマッチに割り込む奴がいれば、それはほぼ嵐導丸を狙った、強奪屋の(たぐい)と思っていい」  上杉のアドバイスは、的を得ていたのだろう。 「王様!物凄い吹雪です!その中心点は、極低温に近いです!」  男ピクシーが、ライルに注進していた。  公園での乱闘に参加せず、さっさと距離を取った連中は、恐らく、霊刀霊剣の持ち主。こうしたサーカスの集団なのだろう。 「あれだな。たたったたたったって、ウィーンフィルが聴こえそうだぜ」  まあ、師匠はレーザーディスク版送ってきたから、無理してハードを手に入れて、まあ見たのだった。  ニューヨークは、秋葉原じゃねえって、強く言いたかったが、見なきゃ見ないで、あとで何を言われるか、解ったものではなかった。  ウェブに登録されてる男のデータを、携帯で見た。  角張った顔と、頬に走った縦線。  あれか?火星人か何かか?  それか、我等の、何かの為に!って、片手挙げる系か?  まあいいや。ライルは、カリバーンを抜いた。  剣身が、ほとんど、曇っていた。  ヘイデン。まあ、頑張れや。  どうして、ほんの数日前に出会ったばかりのギークスに、ここまで心を寄せるのかは不明だが、  ライルは、オタクを変に、信じていたのだった。  カリバーンは、末期に近づいている。妖精の声は、ほとんど届きはしなくなっていた。  それでも。  ライルは、手近な車の、ガスタンクを、バラバラに切り払っていた。 「来たな?冷凍達磨野郎が」  たたったたたったたたったたたった。って音をバックに。 「嵐導丸を、譲り受けん!唸れ!銀竹!敵を、等しく氷に閉ざせい!」 「ああ全く、世話が焼けるぜ」  ライルのカリバーンが、キラリと光っていた。
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