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越中軍
すぐさま、軍事教練が始まった。
俺、アメリカ人で、ヤードっていうより、メートルの方がいいのかな?
普通に、距離をメートルで理解するの、結構大変だ。
ヘイデンは、直径3メートルの、円を地面に書いた。
「この円じゃ。この円を、魂に刻み込め。敵が、この円を越えた時、どれだけ弾が残っていたとしても、決して、銃は使うな。ドワーフが用意してくれた銃剣で、揃って敵を突け。ただそれだけだが、決して忘れるな。突き方は――ムビジ殿に聞け。ムビジ殿!武者を殺す槍の突きを、お教えくだされ!」
ヘイデンがそう言い、
「マジデシネシ。コウツく」
風穴が開くような、突きを披露した。
「マンズデスネス!マンズデスネス!」
目に♡を浮かべて、銃剣を突いているフォーン娘達の姿があった。
どうやらムビジは、フォーン娘達にモテモテであるらしかった。
実際、物凄い速度で、藁で編んだ人形達はボロボロになっていき、そして、
おおう。フォーン達のどよめぎが上がった。
はるかかなたのマンシルエットの中心は、サキーチによって、撃ち抜かれていた。
お茶さま!いきなり言われてヘイデンは、
「ん?おお、あ茶殿」
上杉金三には、ヘイデンに対する、拭いきれない敬意が見え隠れしていた。
それには理由があった。
とある決意を秘めたヘイデンは、自身の携帯との別れを済ませたあと、上杉の元を訪れた。
「その方。名を名乗れ」
――へ?突然何を?上杉は、そう思ったのだが、よく考えて、はっとなった。
「――まさか、貴方は、無課金の希望の星、弊社の戦国ゲーム、「天下布武」の越中の、「お茶漬けさらさら」様ですか?」
「左様。儂が、お茶漬けさらさらである」
けったいな、プレイヤーネームがあった。
「うわああああああ!貴方が!まさか!ああ僕は、備前の「鉄人あ茶汲み」でございます!」
多分、アーチャーなんであ茶汲みだった。
「やはり、そうであったと思うておった。あ茶汲み殿、お久しゅうござる」
いえいえいえいえ!!あ茶はとんでもないって口調で言った。
「こちらこそ!ぱちすとばっかりになって、最近のレイド攻略、スッカリ忘れてました!」
まあ、同じ会社のゲームであるからなあ。お茶様はしみじみ言っていた。
「儂が覚えておるのは、まさに越後勢とのレイド戦である。あ茶殿お陰で、さらさら越えを達成出来た。1ヘックス越えるごとに、体力が全消しになる地獄の山を越えられたのは、あ茶殿の兵糧のお陰であった」
遠い目で、内蔵助は言った。
「ああ、そんなの、ただの課金アイテムですから。さらさら越えした報奨アイテム、越後具足は今じゃ4万で取引されるレアアイテムですし。まさか、リアルでさらさら越えする人なんか、いると思ってなかったですし。背後から謙信急襲した、佐々鉄砲隊の力強さと言ったら。運営に聞いたら、完全に虚を突かれて、謙信にダメージ判定無効処理して、慌てて逃がしたそうですよ?運営からの口止め料アイテム、どうでした?」
完全に、オタクモードで、上杉が聞いた。
「うむ。越後の陣羽織の効果は、凄まじいスペックを叩き出しておるし、今でも、胴の装備を見る度に、さらさら越えをした達成感を、今も感じられるというもの。時にあ茶殿、そなた、ぱちすとをやっておいると聞き及んでいる。さては、藤堂晶を、引いたな?追悼佐藤コラボで」
そう。天下のシミュレーションの鉄人、佐藤大輔氏が亡くなったことをネットで知り、ヘイデンも、ガチで呆然として、学校を一週間休んだのだった。
「ええもう。たった一回のリセマラで、あの美貌がガチャから出てきて。まあ今は、トルーニャンを引こうと努力してまして」
「で、あるか。して、トルーニャンとは、これでるか?」
携帯を見せられて、上杉はその場でガタガタ震えだした。
「そ、そんな、それ、まだ、あめりきゃ側にすら、いないチートキャラ、ですよ?」
「まあ、儂はぱちすとはやらんのでな?天下布武ユーザーと、トレードでもと思うて、リセマラ回したのだが。もし、欲しいのであれば、その方に進呈しようではないか」
その場で、上杉がつくばった。
「備前のあ茶汲みは、越中のお茶漬けさらさら様に、永遠の忠誠を、ここに誓います」
人間て、訳が解らない。ユーラ・カストールは、ぼんやりそんなことを考えていた。
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