1 母の再婚

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 1ー13 添い寝  「ルルシアごときに2人の教師は必要ない!」  アーキライトが魔王のおっさんに声をあらげた。  「こいつは、まだ、やっと絵本が読めるようになった程度だ。わざわざ魔王国の宰相閣下がきて教えるようなレベルじゃない!」  はい?  あの学者風のおっさんってそんな偉いさんだったのか?  ともあれ、僕の先生は、もとどおりアーキライトだけになっていた。  冬がきて、僕は、勉強に力を入れられるようになった。  それを見計らってか、アーキライトは、僕に子供用の教科書を何冊か与えた。  それは、まさに読み書きそろばん、といった感じのもので。  以外と教え上手なアーキライトに僕は、なんだかんだで感謝していた。  僕は、アーキライトにお礼をしたくて。  エリザベスの乳で作ったチーズを使ったケーキを焼いてみた。  夜の勉強の後で僕がそれを出したのを見て、アーキライトは、また固まっていた。  なんで、ケーキで固まるのか?  「アーキライト、兄さん?」  アーキライトがぶはっと息を吹き返すと、僕に小声で言った。  「こんなもので今日の願い事をごまかすつもりか?」  「別に、そんなつもりは」  そういえば今日の願い事は、まだだったな。  僕が今日の願い事をアーキライトに訊ねると、アーキライトは、低い声で答えた。  「添い寝、してくれ」  はい?  僕は、信じられない言葉をきいたような気がして、聞き返した。アーキライトは、繰り返した。  「添い寝、して欲しい」  うん。  僕は、まだ12歳で。  だけど、もう、子供というには大きくて。  アーキライトにいたっては、もう、とっくにいい大人の筈だし。  それが、添い寝?  「私は、寒さに弱い」  アーキライトがぼそぼそと答えた。  「お前は、体温が高そうだ」  「それなら毛布を」  「いや、お前がいい」  アーキライトは、がんとして譲らなかった。  仕方がないので、僕は、その夜、アーキライトの部屋で一緒に寝てやることにした。  アーキライトが服を脱ごうとするので、僕は、慌てて止めた。  「寒いなら服を着て寝ろよ!」  「締め付けられると眠れないんだ」  アーキライトがしゅんとしているのを見て僕は、ため息をついた。  というわけで。  夜着の下だけは、はいてもらえることになった。  
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