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2ー3 ホームシック
アーキライトの願いを毎日1つ叶えることは、僕たちの間の決まり事になっていた。
そして、僕がアーキライトと添い寝することも僕たちにとっては、当たり前のことになっていた。
だけど、最近は、僕は、なにかと理由をつけてアーキライトのことを避けていた。
僕が大人になったからだ。
2年前の冬。
僕は、精通を迎えた。
アーキライトに抱き締められて、彼の温もりの中で僕は、精を吐いた。
そのときは、僕は、アーキライトに気づかれないようにそっと後始末をしたが、アーキライトは、その日の夜、僕に勉強を教えながら意味ありげに僕に微笑んだ。
「なんだよ?」
ムッとしている僕の耳元に口をよせてアーキライトは、囁いた。
「もう、大人だな、ルルシア」
僕は、顔が熱くなった。
ばれてる!
どぎまぎしている僕にアーキライトが呟いた。
「気にすることはない。普通のことだ」
アーキライトにとっては、普通のことですむのかもしれないが、僕にとっては、すまなかった。
だって、僕が精通したのは、アーキライトのことを考えてだったから。
僕は、その頃にはもう、アーキライトのことを兄貴と認めていたし、アーキライトも僕のことを弟みたいに可愛がってくれていた。
それなのに、僕は。
恥ずかしくて、情けなくて。
僕は、アーキライトとの添い寝をするのを止めようとした。
でも、止めれなかった。
それは、アーキライトの願いだったから。
どんなに僕が拒もうとも、アーキライトに願われたら、僕は、それを叶えないわけにはいかない。
それが、僕の力の対価だから。
1度だけ、僕は、他の人の願いを叶えようとした。
それは、魔族の少女で。
魔王のおっさんが家で母さんの手伝いをさせようと連れてきた子だった。
アーキライトの願いを叶えたくないから僕は、その子の願いを叶えた。
「お腹いっぱいミルクを飲みたい」
そのちょっとした願いに僕は、口許を綻ばせていた。
僕は、その日、アーキライトの願いを叶えなかった。
その結果。
アーキライトは、願いを叶えなかった僕を責めたりはしなかった。
でも。
その後、しばらくして魔族の女の子は姿を消した。
魔王のおっさんに聞いたらおっさんは、珍しく歯切れの悪い感じで答えた。
「あの子は、ホームシックになってな」
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