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2ー4 愛
本当は、違うということを知ったのはそれから半年ぐらいが過ぎてからだった。
魔王国から新しくやってきた魔族の少年がいきなりアーキライトにナイフで切りつけたのだ。
すぐに少年は、取り押さえられた。
「こいつのせいで!」
少年は、叫んだ。
「こいつのせいで姉ちゃんが!」
少年は、魔族たちの手で魔王国に送り返された。
アーキライトは、右腕にかすり傷を負ったが、顔色1つ変えなかった。
僕は、その日の夜に、アーキライトの部屋を訪れた。
アーキライトは、相変わらず僕に添い寝をされることを望み続けていたので、僕は、彼の願いを叶えていたのだ。
「あの子の姉さんに何をしたんだ?」
アーキライトに僕が訊ねると彼は、事も無げに答えた。
「抱いてくれとこわれたから抱いた」
はい?
僕は、ショックを受けていた。
アーキライトがあの子のことを好きだったなんて。
でも、確か、魔王のおっさんは、彼女はホームシックで魔王国に帰ったって言ってなかったっけ?
「なんで、あの子は、姉さんの敵をとろうとしたわけ?」
僕が問うとアーキライトは、僕をじっと見つめたまま告げた。
「私が・・あの子の姉を壊したから」
アーキライトは、あの子の姉さんを壊した。
愛で。
アーキライトのことを愛して愛して。
そして、あの魔族の女の子は、愛に狂ってしまった。
後で魔王のおっさんに聞いた話だ。
「淫魔の力を濃く受け継ぐアーキライトにみいってしまった者は、奴に夢中になり、やがて、奴の精がなければ生きられなくなる」
マジかよ!
僕は、憤っていた。
あの可愛らしい魔族の少女をアーキライトが壊したんだ。
たった1度、僕が願いを叶えてやったからといって。
僕は、嬉しそうに願いを叶えてもらってミルクを飲んでいた彼女を思い出して涙ぐんだ。
僕の、せいだ。
僕がアーキライトの願いを叶えずにあの子の願いを叶えてしまったから。
僕は、アーキライトを憎んだ。
だけど。
僕は、アーキライトの願いを拒めなかった。
僕は、アーキライトを憎しみながらも夜毎、アーキライトに抱かれて眠った。
それは、アーキライトが怖かったからだ。
もし、他の誰かの願いを叶えたら。
アーキライトがまた、その誰かを壊してしまうかもしれないから。
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