3 成り変わりの婚約者

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 3ー2 パーティー  女装男子は、クリス・レニアスという名前で立派なお貴族様の子息だった。  クリスは、僕に頭を下げた。  「ごめんね、ルルシア君。僕、アロイス様たちに命令されて。仕方なくやったんだけど・・君を傷つけてしまったこと、ずっと謝りたかったんだ」  謝るために店にきたところ、店員の応募と間違われて働くことになってしまったらしい。  「でも、僕、今は、すごく幸せなんだ。僕は、ずっと女の子みたいだってことコンプレックスだったんだけど・・でも、ここでは、みんな、僕のことバカにしたりしないし」  クリスは、どこからどう見ても女の子にしか見えない可愛らしい笑顔で微笑んだ。  「それに、お菓子もおいしいしね」  僕らの店『カーブランド』の一番人気は、たっぷりの生クリームが添えられたパンケーキだ。  それに客の注文でチーズを振りかける。  カフェで出している商品の人気のおかげで王都でも牛(カーブ)の乳で作られた乳製品が食べられるようになってきた。  それとともに、僕らの商会の扱う乳製品も売れるようになっていった。  そして、今では、僕とクロードは、押しも押されぬ商会の会頭と副会頭となっていた。  もちろん会頭は、クロードで、僕が副会頭だ。  商会の経営とかは、クロードの方が向いてるし。  このエウロキア王国では、もともとタンパク質は、牛(カーブ)の肉でしかとることができなかった。  他にも獣肉は、流通していたが高価だったりして庶民の口には入らなかった。  そのため、慢性的な栄養不良が多く見られていた。  それが、僕たちの牛(カーブ)の乳製品が食べられるようになったため、国民の栄養状態は、改善されてきた。  僕とクロードは、このことをレポートにまとめて卒業論文として提出した。  学院側は、これを受けとり、僕たちの卒業を認めた。  こうして、僕たちの学生時代は、終わりを向かえようとしていた。  「で?卒業パーティーには、誰と参加するんだ?」  クロードにきかれて僕は、頭を振った。  「そんなもの、参加するつもりないよ」  「そんなわけにはいかないだろう?」  クロードが僕を正面から見て告げた。  「仮にも、王族であり、今をときめく商会の副会頭でもあるお前が参加しないなんてありえない!」  
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