3 成り変わりの婚約者

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 3ー3 予感  ちょうどその頃、魔王のおっさんの使いでアーキライトが王都を訪れていた。  アーキライトは、王家の客として王立学院の卒業パーティーに参加することになっていた。  僕が卒業パーティーのパートナーを探していることを知ってアーキライトが学院の寮にいる僕を訪ねてきた。  「パーティーがあるらしいな」  アーキライトにきかれて僕は、頷いた。  「ああ」  「誰を誘う気だ?ルルシア」  アーキライトが僕に訊ねた。  僕は、軽い気持ちで答えた。  「それなら、カフェの店員をしてくれてる友人のクリスに頼むつもりだけど」  「それは・・男じゃないのか?」  アーキライトの冷ややかな声に僕は、はぁっとため息をつく。  「だって、僕と踊ってくれるような女の子は、他にいなくて」  ほんとは、違う。  僕が女の子と踊るのをアーキライトが見たら嫌がるんじゃないかと思ったから、わざわざクリスに頼んだんだ。  クリスは、ほんとは、クロードと踊るつもりだったんだけど、僕の頼みを快く引き受けてくれた。   クロードは、店の別の女の子を誘ったらしい。  「断れ」  アーキライトの言葉に僕は、ぎょっとして彼を見た。  「でも」  「ダンスの相手なら私がしてやる。だから、断れ」  はい?  僕は、意味がわからなくてきょとんとしてしまった。アーキライトは、僕に告げた。  「いいな?私以外の者と踊ることは許さない。わかったか?ルルシア」  「でも!」  僕は、アーキライトに口答えした。  「アーキライトは・・レイラス王女と」  今回のアーキライトの王都訪問は、表向きは魔王国からの使いという形をとっていたが、ほんとは、アーキライトと王女の見合いだってことは、僕だった知っていた。  それなのにアーキライトが王立学院の卒業パーティーで王女じゃない者と踊るなんてこと認められるわけがないじゃないか!  「大丈夫、だ。心配するな」  アーキライトが言うので僕は、再びため息をついた。  「そんなわけ、ないだろ?」  もし、アーキライトがレイラス王女を無視して僕と踊ったりしたら、いくら僕たちが兄弟だとはいえ、許されるわけがないし!  「私を信じろ、ルルシア」  アーキライトがにぃっと微笑むのを見て僕は、なんだかイヤな予感がしていた。
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