1 母の再婚

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 1ー2 農場  僕は、農場の裏の草原の草を特別な草に作り替えた。  香りがよくて、栄養も豊富。  そして、何より牛(カーブ)が好んで食べる草を僕は、作り出した。  それを朝昼晩と与えてやった牛(カーブ)は、丸々と肥太り、毛づやもたちまちよくなった。  農場にいる牛(カーブ)は、半分がオス、残りの半分がメスだった。  僕は、爺さんに頼んでメスに子供を生ませることにした。  が、爺さんは、半信半疑だった。  牛(カーブ)の生殖を人が操れるなんてこの世界の人たちは思ってなかった。  この世界では、牛(カーブ)は、魔物の一種であり、あくまでも飼い慣らしているのは、畑仕事のためだった。  「魔物に思うとおりに子供を作らせるなんてできるわけがあるめぇ」  爺さんは言ったが、僕には、わかないことだった。  ただ、問題があった。  僕の能力である『異世界錬金』は、向かうところ敵なしな力だったが力を使うには対価が必要だったのだ。  それは、1日に1度、力を使うためには、誰かの願いを叶えなくてはならないというものだった。  まあ、僕がやりたいことはちょっとしたことばかりだったので対価である願いも小さ願いでよかったんだが。  僕は、1回力を使う度に爺さんのために願いを叶えてやった。  それは、小さな願いばかりで。  家の雨漏りを直すとか、農場の柵を直すとか、そんなことばかりだった。  爺さんの農場は、僕にとって小さな実験場だった。  僕は、数匹だった牛(カーブ)を倍に増やし、しかも、ちょっとしたブランド牛に改良していった。  農場も少しづつ拡げていって、飼育する魔物も種類を増やしていった。  もちろん、畑の野菜も改良していった。  爺さんの農場でできた野菜や、肉、卵は、特別製で遠く離れた町からも商人たちが仕入れにくるようになった。  しかし、爺さんは、欲のない人間で。  まあ、1人暮らしで家族もいなかったんだが、稼ぎが増えることにはあまり興味がないようで僕がいつしか農場をきりもりするようになっていた。  僕が爺さんの農場で働くようになって5年後、爺さんは死んだ。  爺さんは、僕に農場を残してくれた。  好きでも嫌いでもないと思っていたけど、死んじゃったら涙が出た。  基本、やる気はなかったがいい人間だったしな。  僕は、爺さんのために葬式を出し、そこそこの墓も作ってやった。  
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