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1ー5 ディスり
おっさん、もとい、魔王は、本名をアイスハルト・グリエモアといった。
魔王と母さんは、僕が12歳になった春に町の教会で結婚式を挙げた。
といっても身内だけの地味な結婚式だ。
「だって、いい年のおばさんだし」
母さんは、恥ずかしそうに笑った。
「お互いに再婚ですもの。あまり派手なことはしたくないわ」
というわけで母さんたちの結婚式に立ち会ったのは、僕の他には、おっさんの連れ子で立場上は、僕の兄にあたるアーキライト・グリエモアだけだった。
いや。
かりにも魔王の結婚式だぞ?
僕は、農場で育てたバラを花束にして母さんに贈った。
それを手に母さんは、魔王と永遠を誓った。
僕たちは、式の後、農場でこれからのことを話した。
「わたしは、結婚しても今まで通り酒場で働くつもりよ」
母さんが魔王たちと僕に話したので、僕は、驚いていた。
「でも、結婚したら母さんが働く必要はないんじゃ?」
母さんは、僕に頭を振った。
「わたしは、あの店が好きだし、お客さんたちや、オーナーだちも好き。このまま仕事を続けるわ」
「かまわない」
魔王は、母さんの言葉に頷いた。
「人間であるお前たちが魔王国にくればややこしいことになる。このままここで暮らせばいいさ。私がここに会いに来る」
なんでも転移の術を使えばすぐに行き来できるらしい。
「ってことは、僕も、このままここで暮らせるんだ?」
僕がきくと魔王が肯定した。
「ああ、そうだ。ただ、例の約束の件で何人かの魔族をここに住まわせたい。もちろん、リリアの警備のためにもな」
「まあ!心配性ね、アイスハルトったら」
いちゃいちゃしている2人を置いて僕と魔王の息子は、席を外した。
魔王の息子は、僕の後についてきた。
僕は、気にせず畑を見回ることにした。
僕が屈み込んで野菜の様子をみていると魔王の息子が僕に話しかけた。
「お前、変な顔しているな」
はいっ?
僕は、いきなりのディスりに心底驚いていた。
まあ、魔王の息子さんほど僕は、目鼻立ちもくっきりとはしてないし、髪も目もありふれた黒色ですし、どっちかというとぶさいくですけどね!
でも、今日初めて会った人にいわれたくないわ!
僕は、キッと魔王の息子を見上げた。
そいつは、青みがかった長い銀の髪を後ろでひもで束ねていて、なんか、どこぞのアイドルみたいにすらっとしてるし、神秘的な赤い瞳をしていて。
つまり、かなりの男前なわけだ。
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