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「引かないの?」
「……は? なんで? 何に?」
意味がわらかず、つい冷たい口調で訊き返してしまった。
「いや、だって……。俺がこんな景品狙ってクレーンゲームしてるとか……キモい……みたいな」
言われたことがあるのだろうか。
「べつにキモくないけど。それは何? そのぬいぐるみを狙ってた私がキモいいって言いたいの?」
冷たい言い方にならないように柔らかい声音を意識する。
けれど長谷川くんは真っ青になって「違う!」と大きな声を出した。
彼はハッとした様子で口を手で押さえた。だけどそもそも煩いゲームセンターでそんな大声に注目を集める人はいなかった。
「そうじゃなくて……山下さんは可愛いしこういうぬいぐるみ持ってても変じゃないけど、俺、男だし……」
今さらっと私に可愛いって言ったな、この人。
しかしそれを意識するより何より先に、言わなければいけないことがある。
「ダサい。それはダサい。何? 自分の好きなものを推すために周りの目を気にしないといけないの? 周りの意見とかどうでもよくない? 好きだからアニメを見るし、好きだからグッズも集める。長谷川くんが誰のためにそれを取ってるのか知らないけど、その景品を持つ人に性別必要?」
私は冷静に怒りをぶつけた。
「長谷川くんは、私が男だったらそのぬいぐるみを狙うこと、キモいって思うの? いや思ってもいいけど言うの?」
「そんなこと思わないし言わないよ!」
「でしょ? 私だって思わないし言わない。私は同担拒否勢じゃないから、同じキャラを推してる人と楽しく話したい。もし長谷川くんがそのぬいぐるみやフィギュアの子を推してるんだったら語りたい。もちろん無理にとは言わないけど。少なくとも私はそんくらいの気でいるから。以上。で、それどうやってとったの?」
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