美しき魔術士

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俺の実家、雲雀家は一応代々続く魔術士の家系だ。 俺も……4つ年上の兄も、物心ついたころから魔術の勉強をさせられていた。 だが、俺は全く魔術が使えなかった。 うまれたばかりのときは確かに魔力を持っていた、と母は主張したが どれだけ修行しようが勉強しようが、誰に相談しようが、魔術を使えるようにはならなかった。 初級の呪文も、サポート能力が高い魔術道具も、俺には反応しない。 やがて両親は俺に絶望し、諦め、俺の存在を否定した。 一方、兄は比較的優秀な魔術士で、両親は俺の分も兄を溺愛するようになった。 兄にだけ話しかけ、兄にだけ温かい眼差しを向け、兄だけを伴い外出する。 幼い俺は兄を妬み、憎みそうになったこともあるが、でもそんな気持ちはすぐに消えた。 兄は優しかったから。 両親に見捨てられた家で、兄だけが俺を見てくれた。守ってくれた。愛してくれた。 たくさん話をしてくれ、両親から与えられたものは全部俺にわけてくれ、できる限り俺と一緒にいてくれた。 「青磁……魔術が使えないことは悲劇じゃあないさ。青磁は選べるんだよ、魔術士じゃない生き方を」 そう言って、俺の頭を撫でてくれた。
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