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兄は両親の期待に応えるべく努力し、同世代の魔術士の中ではトップの実力をつけていた。
そして兄が20歳になったとき、名門・雪之城から声がかかったのだ。
それは雪之城の大旦那様から直々の誘いだった。
あなたの植物魔術を、雪之城家で活かしてほしい。
あなたに魔術士としての仕事を与えたい。
という内容は、うちのような末端の魔術士家系としては夢のような話で。
兄には素晴らしい未来が待っていると両親は歓喜した。
俺も誇らしかった。
兄が認められたことが。
兄はやっぱりすごい人なんだと、自分のことのように嬉しかった。
兄も嬉しいだろうと、誇らしいだろうと、そう思った。
でも
雪之城家に向かう、一週間前。
兄は失踪した。
「魔術士以外の生き方がしたい」
そう書かれた手紙を残して。
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