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両親は半狂乱で兄を探したが、結局見つからなかった。
兄の知り合いも誰一人行方を知らなかった。
最愛の息子を失った両親は嘆き悲しんだが、事態はそれだけでは終わらなかった。終われなかった。
雪之城家だ。
末端の雲雀家から見て、名門・雪之城家は雲の上の存在。
逆らうことも、無礼を働くことも決して許されない。
それが……
雪之城から持ちかけてくれた話をこちらが反故にしてしまったのだ。
どんな仕打ちが待っているのか想像もできなかった。
両親は雪之城家に深くわび、どんな償いでもすると涙を流した。
そんな両親に、雪之城の大旦那さまは思いもよらない提案をした。
お前たちにはもう一人息子がいると聞いた。
詫びの印に、その者をうちに寄越せ。
両親はどう思っただろう。
魔術の使えない俺は一家の恥だ。
その俺を出せと言われ、どんな気持ちになっただろう。
両親は震えながら、俺が全く魔術を使えないことを打ち明けた。
すると大旦那さまは意外なことに楽しそうに笑ったらしい。
よい、よい。面白い。
ならば、次期当主である、孫娘の使用人にでもしよう。
もし、そいつがよい働きをしたならば……
お前らの家の無礼はすべて水に流そうではないか。
そう告げられ、両親は震えながら頷くことしかできなかったらしい。
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